Hitz技報第73巻第1号

当社では、面蒸着方式を採用した大型基板対応有機EL製造装置の開発を進めている。有機ELデバイスを作製するための有機層成膜用の蒸発源には、高膜厚均一性や膜の劣化防止に加え、材料利用効率の向上や大面積化にも対応できることが要求される。本報では、面蒸着方式の特長、大型化への取り組み、さらに高生産性を目的とした1つのチャンバで有機層全層を蒸着できる方式でのデバイス作製結果について報告する。

文責者
藤本 英志
共同執筆者
野田 武史、菊地 昌弘、上川 健司、大工 博之、松本 祐司、藤本 恵美子、黒瀬 守、中村 聡

当社は、汎用性の高い成膜方法であるEB(電子ビーム)蒸着法を用い、有機EL(electroluminescence)素子の有機層上にAl電極を低ダメージ、且つ低温で高速成膜する装置を開発した。EB蒸着による有機EL素子のAl電極成膜において、主なダメージ因子であるX線と反射電子の低減を図った。X線量低減のためにEBの加速電圧を下げ、反射電子量低減のためにルツボ周りの磁場最適化と反射電子トラップの設置を行い、さらに成膜高速化のためにCハースライナーとリフレクタを用いてAl材料とCuルツボの断熱を強化することにより、抵抗加熱蒸着法を用いて作成した素子とほぼ同等の素子特性を得ることができた。この時の成膜速度は抵抗加熱蒸着法の約8倍であり、さらに蒸着時の基板温度は抵抗加熱蒸着法より20℃以上低い40℃以下に抑制されることがわかった。

文責者
山田 実
共同執筆者
山成 淳一、清水 祐輔

当社では、走行フィルム上に多種多様な膜を付ける成膜装置の開発を進めている。本稿では、スパッタ源を搭載した装置の構成を紹介し、ITO(Indium Tin Oxide)透明導電膜のスパッタ成膜技術と、AlのEB(Electron Beam)蒸着技術の開発状況について説明する。また、フィルム走行制御システムの構成と、フィルムを大気中と真空チャンバー間で搬送する装置の開発状況についても報告を行う。

文責者
山田 実
共同執筆者
石田 俊道、横山 政秀、中静 勇太、田窪 芳久、黒瀬 守、中井 清人、原田 寿典、森 孝之、上出 修、岡部 三郎、上野 晴紀

DSCの対極材料は高導電性、化学的安定性、電解液中のヨウ素還元触媒能を有するなどの物性が求められている。一般にヨウ素に対し比較的安定でヨウ素イオンの還元触媒能に優れる白金が対極として用いられているが、白金自体が高価なことや蒸着プロセスが必要となることから、コストが高くなるという問題点があるため、白金代替材料の探索が急務である。カーボン材料は、上記の物性を満たすうえ低コストであるため、対極材料への適応が模索されている。

本開発では、カーボン材料にホール輸送材としてp型半導体酸化ニッケルを担持した対極を作製し、従来の白金に近い性能を示すことを確認した。

文責者
奥村 拓郎
共同執筆者
杉生 剛、井上 鉄也、池上 和志、宮坂 力

太陽電池の電極や光吸収層の材料の進化に対応するため紫外波長域のレーザ光が必要となっている。
レーザ光が短波長になると、波長変換結晶でのレーザ光の吸収率の増大により、変換効率の低下が起こることが知られている。我々は、結晶内部の温度分布と位相不整合による変換効率の低下の関係を、熱伝導方程式とMaxwell方程式とを連成させることで解析する手法を考案した。解析手法の妥当性を確認するために、BBO結晶によるNd:YAGレーザの第4高調波発生を行った。これにより、レーザ強度と結晶長さの相互関係が波長変換に及ぼす影響を定量的に把握でき、最適な結晶長さの選定を行う手法として期待できる。

文責者
井上 典洋
共同執筆者
大渕 隆文、中山 耕一郎、福田 直晃、滝谷 俊夫、熊谷 寛

当社が扱う低負荷対応ディーゼルエンジンには、約10%の負荷でも連続運転が可能という特長がある。離島など小規模な電力系統に再生可能エネルギーを大量導入するには、その出力変動をいかに補償するかが重要となるが、低負荷対応ディーゼルエンジンであれば運転可能領域が広いため、電力品質の維持・安定化制御には極めて有利となる。当社とバルチラ社では、実機関を用いて8%負荷での100 時間連続運転試験を行い、運転トレンド、燃料ノズルやピストンの汚れなどから、長期間の低負荷運転が可能なことを実証した。また当社では、この特長を活かし、離島や新興国内陸部などのマイクログリッドを対象とした、風力発電とのハイブリッドシステムを提案している。

文責者
三宅 寿英
共同執筆者
江口 知孝、岡崎 泰英

GPS可降水量とは、GPSの電波遅延を利用して算出した観測点上空の水蒸気の積算量のことである。本システムでは、電子基準点を用いて日本全国のGPS可降水量をリアルタイムに得ることが可能である。本システムで得られたGPS可降水量は、民間気象会社や大学、研究機関にて利用され、集中豪雨の予測や地球温暖化プロセスの解明の研究などに応用されている。本報告では、リアルタイムGPS可降水量解析システムの特徴および、最近の研究成果および適用事例について述べる。

文責者
和田 晃
共同執筆者
林 稔、山田 浩章、杉本 淳、石川 公美子、阿部 知宏

輸送用キャスクの緩衝体には、木材が主として用いられてきた。しかし、設計で規定する仕様の材料を安定して確保することが難しくなってきている。そこで、本研究では、R-PUFを代替材料として選定し、その適用可能性を実験的に評価した。

まず、R-PUF緩衝体を装着した1/3スケールモデルによる9m高さからの自由落下試験を実施し、木材緩衝体試験結果との比較を通じて、R-PUFの緩衝性能が木材より優れていることを確認した。つぎに、800℃に設定された炉内に試験体を30分間保持する試験を実施し、R-PUFの耐燃焼性を確認した。以上の試験結果より、R-PUFはキャスク用緩衝材として要求される緩衝性能および耐燃焼性能を十分に有している。

文責者
岡田 潤
共同執筆者
芦田 吏史、大岩 章夫

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