Hitz技報第76巻第1号
自治体による収集および運搬体制が確立された都市域廃棄物である一般廃棄物から、生ごみおよび紙ごみ等のバイオマスを分別して、同時糖化・発酵法でバイオエタノールを製造し、さらにその残渣からメタン発酵法でバイオガスを製造する二段階原燃料化システムを開発した。
5t規模の実証機および小型メタン発酵装置での試験結果にもとづき、以下の試算結果を得た。
- エネルギー回収率18.0%
- 従来の一般廃棄物焼却処理に対する温室効果ガス削減率84%
- 蒸気発電付帯の焼却処理に対する20年間の施設建設費および施設運営費削減費:約24億円
- 文責者
- 中森 研一
- 共同執筆者
- 冨山 茂男、世良 豊、吉良 典子、林 俊介、増成 伸介、西村 浩人
当社では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の非常に高い発電端効率と燃料多様性に着目し、産業用発電装置(20kW級以上)の開発を進めている。既に実用化が進み、信頼性の高い家庭用0.8kW級のセルスタックを導入し、これを複数積載することで大型化開発のスピードアップを図る。従来の熱機関(タービン、エンジン)を上回るAC送電端効率50%以上、耐久性90,000hを開発目標とし、現在は10kW級ベンチ試験により設計データを取得、20kW級の実証機及び商品機の設計を行っている。本稿では、開発概要、10kWベンチ試験状況および今後の展開に関して報告する。
- 文責者
- 高木 義信
- 共同執筆者
- 酒井 良典、岡崎 泰英、伊妻 恭平、八木 厚太郎、川見 真人、橋本 大祐、若宮 和輝
当社では、MW級の大型電力貯蔵(二次電池)システムの構築を目的として、新規亜鉛空気電池(Z-HAB®:Hitz-Zinc Air Battery)のコア部である電子素子(セル)の開発を進めている。開発の特徴は、従来の亜鉛空気電池(一次電池)の空気極に用いられていたカーボン原料の代わりに導電性酸化物セラミックスのみを用いることとし、電池の大型化に適した円筒型デザインを採用し、製造法としては量産性・大型化に優れた湿式法を採用したことにある。導電性酸化物セラミックスには、La系ペロブスカイト型酸化物を用いた。(La、Sr)(Mn、Fe)O3-Xを押出成形法にて空気極支持管を作製し、その外表面に(La、Sr)(Co、Fe)O3-Xをスラリーコート法にて触媒層を成膜することで円筒型空気極を作製した。次に、銅ロッドを基盤とし亜鉛を電析コーティングすることで作製した負極を円筒型空気極の内側に設置した。電解液としてKOH濃度が4.5Mから7.0Mの範囲の水溶液を用いることで作製したHitz式の亜鉛空気電池は、運転温度90℃の条件下にて0.7Vで放電電流80mA/cm2 、出力密度0.055W/cm2 と高い放電特性を示した。また、500回の充放電サイクル試験を行い、劣化率は5%以下であることを確認した。
- 文責者
- 相澤 正信
- 共同執筆者
- 清水 岳弘、亀山 和也、西浦 崇介、府金 慶介
GPS海洋ブイは、現在、国土交通省港湾局のナウファスの「GPS波浪計」として日本全国に18基設置され、沖合の大水深海域で波浪の定常観測を実施している。GPS海洋ブイは津波観測も可能であり、東日本大震災による大津波発生時には、気象庁の津波警報の更新に利用された。津波の早期観測をするためには沖合数100kmの震源地付近にGPS海洋ブイを設置する必要があるが、従来のGPS海洋ブイでは設置可能距離は沖合20km程度までであった。
当社では、さらなる沖合観測を実現するために新しいGPS海洋ブイを開発しており、2014年11月から港湾空港技術研究所と共同で実海域での海象観測の実証実験を開始した。本報では、新型GPS海洋ブイの概要と実海域での実証実験について報告する。
- 文責者
- 山田 浩章
- 共同執筆者
- 松下 泰弘、三宅 寿英、井岡 良太、林 稔、杉本 淳、衣川 美沙、平野 辰昇、和田 晃
当社では国土交通省九州地方整備局、(一財)ダム技術センター、鹿島建設(株)とともに、浮体式仮締切設備を開発し、九州地方整備局向けの鶴田ダム上流仮締切設備として2013年に設置し、ダム再開発に寄与した。浮体式仮締切は扉体の内・外側面に鋼板(スキンプレート)を貼り、底蓋と一体化した仮締切扉体を浮体化し、扉体上方のダム上流面に設置した浮上り防止金物で浮力を支持する構造であるため、従来方式では大規模となっていた支保設備を大幅に低減でき、施工性を飛躍的に向上させた工法である。このため従来方式と比べて、潜水作業を約50%、工期を約4か月短縮することができた。また仮締切内への漏水量を従来方式の約1/10に低減し、品質的にも向上することが確認できた。
- 文責者
- 神藤 拓也
- 共同執筆者
- 田窪 宏朗、宮本 修、宇都宮 聡太
道路橋など大型の鋼構造物には溶接が多用されているが、溶接止端部に繰返し負荷が作用すると、疲労き裂が発生する場合がある。この疲労き裂発生を防止することは非常に重要である。そこで、本研究では高張力鋼(HT780材)の溶接継手の疲労強度向上を目的として、溶接止端部の応力集中および溶接残留応力に着目し、これらを低減させる各種処理方法の効果を比較した。さらに効果を増大させることを狙いとしてそれらの処理の組合せについて検討した。その結果、TIGドレッシングとバニシングの組合せ処理を適用することにより、応力集中が低減し、最大-800MPa、深さ1800µmの圧縮残留応力が得られることが分かった。疲労試験結果より、溶接継手の疲労強度は大幅に改善され、疲労限度は(社)日本鋼構造協会が設定する母材の一定振幅応力範囲の打ち切り限界190MPaより大きくなり、最大で約280MPaに到達した。
- 文責者
- 馬 東輝
- 共同執筆者
- 芦田 吏史、岡田 潤、北村 幸嗣、深井 康宏、森田 寛之
トチュウエラストマー®は植物トチュウから生産される新規バイオポリマーである。イソプレンユニットを基本単位としており、ミクロ構造はトランス型ポリイソプレンである。天然物のトチュウエラストマー®は高分子量、高立体規則性を有した耐衝撃性に優れた熱可塑性エラストマーである。当社では生物学的手法による汎用グレードと高純度化した精製グレードのトチュウエラストマー®を開発しており、トチュウエラストマー®の耐衝撃性を活かし、樹脂の耐衝撃性改質剤としての用途展開を進めている。本稿では、精製グレードの基礎物性および、精製グレードの耐衝撃性向上効果について報告する。
- 文責者
- 山口 修平
- 共同執筆者
- 武野 真也、柚木 功、武野 J カノクワン、鈴木 伸昭、中澤 慶久
大阪大学 宇山 浩
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