脱硝装置・脱硝触媒・脱炭素関連触媒
当社では1960年代に脱硝触媒の開発を開始、1970年代に世界初の商用脱硝触媒販売を行いました。1970年代から現在に至るまで改良を加えながら50年以上脱硝触媒の販売を続けております。
また、脱硝装置・脱硝触媒で培った触媒開発技術を用いて脱炭素事業に関連した触媒の開発も行っております。海運業界では船舶燃料の脱炭素化に向けた取り組みが進められる一方で、燃料転換に伴い、温室効果ガス(GHG)であるメタンガスやN2Oガスを含んだ排気ガスの放出量増加、アンモニア燃料を取り扱う際の安全性など代替燃料ごとにそれぞれ課題が生じています。当社ではGHG排出削減をはじめとした課題解決を目的に触媒の開発を進めており、近い将来での事業化を目指しております。
| 代替燃料 | 課題 | 解決方法 | 当社開発触媒 |
|---|---|---|---|
| LNG | 未燃メタン(メタンスリップ) | GHG削減 | メタン酸化触媒 |
| アンモニア | N2O生成 | GHG削減 | N2O分解触媒 |
| 未燃アンモニア(アンモニアスリップ) | 脱硝によるアンモニア活用 | 脱硝触媒 | |
| 施設内の安全性確保 | アンモニア除害 | アンモニアクラッカー触媒 | |
| 燃焼性の悪さ | 水素との混焼 | アンモニアクラッカー触媒 | |
| 水素 | 輸送・貯蔵コスト | アンモニアから水素生成 | アンモニアクラッカー触媒 |
| メタノール | NOxの生成 | 脱硝 | メタノール脱硝触媒 |
主なサービス・製品
脱硝装置・脱硝触媒
工場や発電所の煙突より排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)は、太陽の強い紫外線を受けることによって、光化学オキシダントやPM2.5粒子を生成し、人体や植物に悪影響を与えます。また、NOxは大気中で化学反応を起こし硝酸となり、湖沼や河川、土壌を酸化させ植物や生物に悪影響を与える酸性雨の原因にもなります。当社は、このNOxをアンモニアと反応させて分解し、無害化する脱硝触媒および脱硝システムを提供し、大気汚染の軽減に貢献します。

また、NOxは陸上プラントのみでなく舶用エンジンからも排出されます。当社は脱硝触媒と舶用エンジンを製造する世界で唯一のメーカーである強みを生かして、船舶に最適なSCRシステム(Selective Catalytic Reduction:選択的触媒還元法)の開発に2009年より着手しており、2021年以降SCRシステムの受注・供給を開始しております。
(※舶用原動機事業は2023年4月1日付でグループ会社の日立造船マリンエンジン株式会社が承継しました。)
- 脱硝装置・脱硝触媒の応用技術
原理
火力発電所やごみ焼却発電施設、化学プラントなどの固定施設や舶用ディーゼルエンジンから排出される燃焼ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を、アンモニアと反応させて窒素と水に分解し無害化することにより、NOxの排出量を低減します。
脱硝装置の構成
脱硝装置は、脱硝触媒、脱硝反応器、アンモニア注入装置、アンモニア希釈装置、アンモニア貯蔵供給設備などから構成されます。

脱硝触媒

1969年に脱硝触媒の開発を開始し、1973年に製品化して以来、改良を重ねて2016年より現有製品NOXNON800の供給を開始しています。本製品を、日本国内に留まらず米国、中国など世界各地に供給しています。
触媒(NOXNON800)の特長
- 1幅広い反応温度域に対応可能
- 2多種、多様な燃料に対応可能
主な実績
ガスタービン・各種ボイラ(石炭焚きおよび重油焚きなど)・ディーゼルエンジン・ごみ焼却発電施設・エチレン分解炉・石油改質炉・焼結炉など、あらゆる分野に脱硝触媒および脱硝システムを提供しています。1974年に国内向け初号機を納入して以来、米国や中国、韓国、台湾、サウジアラビア、カタールなど、640基以上を納入しています。(2024年12月時点)また、脱硝システムの応用技術である舶用SCRシステムの受注実績は100基以上です。(2021年時点)
メタノール脱硝触媒
背景

アンモニアを還元剤とする脱硝触媒は、アンモニアとエンジン排ガス中のSOx(硫黄酸化物)が反応して酸性硫安を反応器内に析出し、触媒の性能を落とす可能性があります。そこで、アンモニアではなくメタノールを還元剤とするメタノール脱硝触媒を開発いたしました。
メタノール脱硝触媒の特長
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1尿素SCRに比べて低温で脱硝
還元剤 反応温度域 性能極大 尿素/アンモニア 250~400℃ 350℃付近 メタノール 150~250℃ 200℃付近 -
2アンモニアが存在しないため硫安が生成しない
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3蒸発器不要のため省スペースとなり、配管内の直接噴霧が可能
メタン酸化触媒
背景
脱炭素化に向けた船舶の代替燃料のひとつにLNGがあります。LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)とは、メタンが主成分の天然ガスを冷却して液体化したもので、他の化石燃料に比べてGHGの排出量が少なく、価格競争力も水素やバイオ燃料に比べて高いため代替燃料として注目されています。一方で、未燃メタンが排気ガスと共に大気放出されるメタンスリップの発生が懸念されています。メタンの温暖化係数は二酸化炭素の約28倍と大きいため、LNGのGHG削減効果引き上げを目指してメタンスリップ削減率の高いメタン酸化触媒が求められています。
原理
エンジン排ガスに含まれる未燃の燃料メタンを触媒を用いて酸化し、メタンよりも温暖化係数の小さい二酸化炭素として排出することで環境負荷低減に貢献いたします。
メタン酸化触媒触の特長
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1従来よりも低い温度(350℃)でメタン酸化率70%を達成
主な実績
当社のメタン酸化触媒は、2021年度から国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)によるグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」プロジェクトの「触媒とエンジン改良による LNG 燃料船からのメタンスリップ削減技術の開発(以下、本事業)」に採択されています。
本事業の陸上試験にて削減率 93.8%(エンジン負荷率 100%時)を達成しており、一般財団法人日本海事協会より削減率達成の確認を証明する鑑定書を世界で初めて取得しました。2024年度以降から大型石炭専用船で実海域での実証試験を開始します。
N2O分解触媒
背景
アンモニアは燃焼しても二酸化炭素が排出されないことから、脱炭素化に向けた化石燃料の代替燃料として期待されており、国内でも船舶用アンモニアエンジンの開発が進められています。一方で、アンモニアを酸化した際に発生するN2O(亜酸化窒素)の温暖化係数は二酸化炭素の約265倍と大きいため、そのまま排出した場合GHG削減効果の低下が懸念されます。GHG削減効果を引き上げるためにはN2Oを窒素と酸素に分解するN2O分解触媒を併用することが重要となり、より効率的な分解を可能とするN2O分解触媒が必要とされています。
原理
アンモニアエンジンからは温暖化係数が二酸化炭素の約265倍のN2Oが排出されますが、触媒を用いて排出されたN2Oを効率的に分解することで環境負荷低減に貢献いたします。
N2O分解触媒の特長
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1開発中の触媒2種類で400℃環境下におけるN2O分解率ほぼ100%を達成
(舶用エンジン排ガスは400℃以下)
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2当社製の他触媒と併用することで、アンモニア燃焼排ガスをまとめて処理するシステムを開発中
主な実績
N2O分解触媒においても2024年度からNEDOによるグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」プロジェクトの「アンモニア燃料船搭載の N2O リアクタ開発」に採択されています。2026年より実船実証試験開始を予定しており、N2O分解触媒の社会実装に向けた開発に取り組んでおります。
アンモニアクラッカー触媒
背景
アンモニアに熱を加えて水素と窒素に分解する技術をアンモニアクラッキング(分解)と呼び、アンモニアクラッキング技術に用いる触媒がアンモニアクラッカー触媒です。主な用途は①アンモニアから水素を分離生成 ②アンモニア除害 の2つです。アンモニアを分解して生成した水素をFCに使用することで、水素の輸送や貯蔵問題に関する問題を解決します。また、アンモニアエンジンをはじめとするアンモニアを使用する施設の配管から安全にアンモニアを取り除くことで施設の安全性向上を図ります。


原理
一般的なアンモニアクラッカー触媒は分解に必要な熱を外部からバーナー、ヒーター等で供給しますが、当社の触媒は一部のアンモニアを酸化して分解に必要な熱を確保する内部熱供給方式です。
アンモニアクラッカー触媒の特長
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1一般的に貴金属を使用するのに対し、卑金属使用のため安価
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2触媒形状は一般的に粒状なのに対し、ハニカム形状のため圧損が低い
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3ヒーター等による加熱は起動時のみのため、外部熱供給式に比べて加熱時間が短縮される
(常時の加熱は不要)
関連技術
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